二子玉川にある兵庫島公園と二子玉川公園の間の多摩川左岸の河川敷に、まっすぐな砂利道が伸びている。
砂利の粒は細かいから、ロードバイクなら走れそうだが、この道はほぼ歩道だろう。
晴れた日にここを歩くと、気持ちが良い。
左岸にそびえるのは、二子玉川ライズのビル。
行く手の先の右岸には、武蔵小杉のビル群が見える。
左岸の堤防を越えた岸の上に、松の木が数本立っている。
もともとそこにあったものかもしれないが、昔川辺にあった松林の松が、二子玉川の再開発や新堤防建設で伐採された際に、移植されたのかもしれない。
駅前のライズショッピングセンターが開業したのが2011年。
兵庫島公園より下流域の新堤防ができたのが2014年。
新堤防ができる前の二子玉川には、川辺に桜並木と松林が続く、すばらしい風景があったという。
新堤防は、この辺りの多摩川流域に甚大な被害をもたらした2019年の台風19号襲来時も、堤防のできていた区域を川の増水から守り、その役目を果たした。
やはり背に腹はかえられない。
工事の都合上、木々の伐採も仕方なかったのかもしれない。
それでも、松林のある川辺の風景を、見たかったなあと思う。
今も松が残っている
ちなみに、河川敷と岸辺の住宅地を隔てているのが新堤防だが、住宅地とライズショピングセンターの間(つまり住宅地より内陸)には旧堤防がある。
旧堤防の北に沿う道路が「多摩堤通り」。
旧堤防には、「陸閘(りっこう)」と呼ばれる、赤レンガ造りの切り込みの跡も見られる。
陸閘は堤防の内と外の間の通り道だが、洪水の時は、門か蓋を閉めなければならないものであったはずだ(でもそのような構造は残っていない)。
河川敷の道に戻ろう。
しばらく歩くと、左岸に、川に向かってテラス状に開けた階段が見えてくる。
階段の上は、二子玉川公園の「眺望広場」だ。
ライズショッピングセンターや二子玉川公園は、いわゆる「スーパー堤防」に似た構造の、幅の広い高台の上に造られている。
眺望広場の名にふさわしく、いつも誰かが階段に座って川を眺めている。
もう少し下流の方へ進む。
土手に桜の木があった。
この桜は伐採されずに残ったのだな。
この辺りの住所は玉川〜上野毛を過ぎて、野毛である。
対岸の武蔵小杉は近いように見えて、まだまだ先だ。
河川敷にお化けの森みたいな藪が現れる。
この辺で引き返そうか。
その時、お化けの森の向こうの原っぱの中に、何かの頭が見えた。
ライオンだ。
最近少し有名になってきた「孤独なライオン」。
河川敷の窪みの中に、体が半分埋まっている。
孤独なライオンは、Google Mapにも載っている。
はじめ見つけた時は何かの不法投棄かと思ったが、Google Mapにも載っているのだから、もう立派なランドマークだろう。
夏は周りの草が伸びて、本当にサバンナにいるライオンのような風情になる。
以前は他にも仲間がいたという話だ。
たしかに孤独だな。
多摩川の増水時には、孤独なライオンも簡単に水没してしまうだろう。
もしかしたら、そんな時でも何とか流されないように、体が埋まっているのかな。
またね、孤独なライオン。